TSMC(ティーエスエムシー)のすごさの源泉は、①技術力②顧客③供給力④革新力⑤世界拠点の5つあります。
iPhoneやソニー製品に使われる世界最先端の半導体企業であるTSMCのすごさを、中高生&保護者向けにやさしく解説します。
TSMC(ティーエスエムシー)ってなに?
「TSMC(ティーエスエムシー)」という言葉を最近、ニュースやインターネットでよく見かけると思いませんか?
「なんだかすごい会社らしいけど、具体的に何をしているの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
特に、将来の進路を考えている中高生や、お子さんのキャリアを応援したい保護者の方にとっては、TSMCはとても魅力的な選択肢になり得る存在です。
TSMCは「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company」のそれぞれ頭文字を取ったもので、台湾に本社がある、世界最大の半導体受託製造会社です。
TSMCは、iPhoneやソニー製品、任天堂のゲーム機など、皆さんが普段使っている多くの電子機器に欠かせない「半導体」という部品を専門に作っている会社です。
例えるなら、半導体の設計図を書く「建築家(AppleやNVIDIAなどの企業)」と、その設計図通りに最高の品質で実際に家を建てる「大工(TSMC)」の関係に似ています。
TSMCは、この“製造に特化して専門技術を極めた会社”として、AppleやNVIDIA、任天堂といった世界のトップ企業から絶大な信頼を得ています。
なぜTSMCがここまで注目され、私たちの生活に不可欠な存在になったのか、その「すごさ」を5つのポイントに分けてわかりやすく解説していきます。
TSMCのすごさ:5つの理由
TSMCが世界中で「すごい!」と言われるのには、明確な理由があります。
① 技術力:最先端ナノメートル技術
TSMCは、世界で最も進んだ半導体を作る技術を持っています。
ナノメートル(1メートルの10億分の1)という、想像もできないくらい小さな世界で、髪の毛よりもはるかに細い回路を作り上げています。
この超微細な技術があるからこそ、スマートフォンやAI(人工知能)に必要な、小さくて高性能なチップを生み出すことができるのです。
TSMCの技術力は、世界のテクノロジーの進化を支える土台となっています。
② 顧客:Apple/NVIDIAなどとの契約
TSMCの顧客には、Apple、NVIDIA、Qualcommなど、世界を代表するテクノロジー企業が名を連ねています。
これらの企業は、自社で半導体を製造するのではなく、TSMCにその製造を委託しています。
これは、TSMCの技術力と信頼性が非常に高く、最高品質のチップを提供できると認められている証拠です。
③ 供給力:世界シェア90%以上
TSMCは、世界中の最先端半導体の製造を担っており、特に高度なチップの分野では世界の90%以上を生産していると言われています。
もしTSMCの生産が止まってしまうと、iPhoneの製造がストップしたり、自動車産業が大きな影響を受けたりするなど、世界の経済全体が大きく混乱するほど、その供給力は絶大です。
④ 革新力:3D IC/GAA/CoWoS
TSMCは常に新しい技術開発にも取り組んでいます。
例えば、「3D IC」はチップを立体的に積み重ねて性能を向上させる技術、「GAA(Gate-All-Around)」はより微細な回路を作るための次世代トランジスタ技術、「CoWoS」は複数のチップを効率的に接続するパッケージング技術です。
これらの革新的な技術によって、TSMCはこれからも半導体業界の最前線を走り続けます。
⑤ 世界拠点:台湾・アメリカ・日本への展開
TSMCは台湾を拠点としながらも、アメリカや日本(熊本)にも製造拠点を広げています。
これにより、世界中で安定した半導体の供給を可能にし、各国との協力関係を深めています。
日本国内にも工場ができることで、国内での雇用機会も増え、日本の産業にも大きく貢献しています。
また、日本の大学との連携も積極的に進めていて、東京大学とは2025年6月に「TSMC東大ラボ」を開設しました。
TSMCで働くには?将来のキャリア像
TSMCのような世界トップ企業で働くことは、グローバルな舞台で活躍できるチャンスです。
半導体分野は、理系の知識が求められますが、様々な職種があります。
理系高校/高専/大学で何を学ぶか?
TSMCのような半導体メーカーを目指すなら、理系の科目をしっかり学ぶことが重要です。
高校では物理、化学、数学を基礎から固め、大学や高専では「電気電子工学」「材料工学」「情報科学」「機械工学」などを専攻するのが一般的です。
特に、半導体の製造プロセスや材料に関する知識は非常に役立ちます。
また、半導体の知識を学べることをアピールする大学や高専の学科やコースも、近年多くできています。
熊本など日本拠点での就職のために
TSMCは日本国内にも拠点を展開しており、特に熊本県に工場(JASM)が建設され、つくば(研究)や横浜みなとみらい(デザイン)にも拠点があります。
これにより、日本国内でTSMCの最先端技術に触れ、働く機会が増えています。
大学や高専で専門知識を身につけ、インターンシップや教育プログラムなどに積極的に参加することで、就職への道筋が見えてくるでしょう。
TSMC志望の学生がやっておくべきこと
TSMCのようなグローバル企業を目指すなら、今のうちから準備をしておきましょう。
①英語学習
TSMCに限らず、どんな企業に就職しても、世界中のビジネスパーソンやエンジニアとの協力は欠かせません。
世界中のエンジニアと協力して研究開発するため、英語でのコミュニケーション能力は必須です。
オンライン英会話や参考書で、英語の基礎を学んでみましょう。
②研究インターン
大学や研究機関、企業のインターンシップに参加し、実際の研究開発や製造現場を体験してみましょう。
ぜひ、生の現場を見て、そこで働く研究者・技術者と交流することをお勧めします。
例えば、TSMCでは学部3年生以上を対象とした、台湾でのインターンシッププログラムを、全国の大学で募集しています。

また、福岡大学では、電子情報工学科の4学生が、雲林科技大学に留学して、現地で提供しているTSMC半導体人材育成日本人留学プログラムを受講することができます。
③CAD基礎
CAD(Computer Aided Design)は、設計図を描くためのツールです。
基本的な操作を学ぶことで、エンジニアとしての基礎力が身につきます。
④工学系ITスキル
プログラミング(Pythonなど)やデータ解析の基礎知識も、今後のエンジニアには不可欠です。
熊本大学の情報融合学環では、データサイエンス(統計・プログラミング)に力を入れながら、半導体の実践的な知識を学べる、DS(データサイエンス)半導体コースが開設されました。
よくある質問Q&A

半導体ってどんな職業があるの?
半導体業界には、設計、製造、検査、研究開発、営業、品質管理など、多種多様な職業があります。
設計エンジニア | チップの回路を設計します |
プロセスエンジニア | 半導体の製造工程を管理・改善します |
材料エンジニア | 半導体の材料を研究・開発します |
装置エンジニア | 半導体製造装置の導入・保守を行います。 |
理系だけでなく、文系の知識も活かせる職種もあります。

女の子でも安心?
はい、もちろん安心です!半導体業界は性別に関係なく、能力と意欲のある人が活躍できる場所です。
実際に多くの女性エンジニアがTSMCを含め、半導体業界で重要な役割を担っています。
工場環境も「クリーンルーム」という、非常に清潔な場所での作業が中心です。

どれくらい勉強すれば?
半導体分野は奥が深いですが、何よりも「知りたい」「作りたい」という探究心が大切です。
高校で基礎をしっかり学び、大学や高専で専門知識を深めていくことが重要です。
一歩ずつ着実に学んでいけば、必ず道は開けます。
まとめ
TSMCは、私たちの生活を支えるスマートフォンやAIなど、あらゆる先端技術に欠かせない半導体を製造する、まさに「世界に通用する会社」です。
その高い技術力、圧倒的な生産能力、そして世界の主要企業からの信頼は、半導体業界だけでなく、世界の経済全体に大きな影響を与えています。
将来の進路に迷っている中高生の皆さん、そしてお子さんのキャリアをサポートしたい保護者の皆さんにとって、TSMCは「半導体」という分野の魅力を知り、新たな進路選択のヒントになる存在です。
ぜひこの機会に半導体についてさらに調べて、皆さんの未来の可能性を広げてみてください。
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