この数年、日本で半導体の話題を盛り上げた主役のひとつは「TSMC(ティーエスエムシー)」ではないでしょうか。
この記事ではTSMCについて中高生にもわかるように徹底解説します。
TSMCってなに?
TSMCは「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾積体電路製造)」の略で、世界一の「半導体を作る専門会社」です。
スマホやパソコン、ゲーム機、車など、いろんな電子機器の“頭脳”になるチップ(半導体)を作っています。
TSMCの歴史
TSMCがいつからこんなに大きくなったのか、歴史をざっくり紹介しましょう。
TSMCのスタート
1987年に台湾で設立されました
創業者はモリス・チャン(張忠謀/ちょうちゅうぼう)さんという人で、「製造だけ専門の会社を作る」という、当時では珍しいアイデアを考えました。
はじめは地味な存在
1980〜90年代は、IntelやIBMみたいな大きな会社が「設計も製造も自分でやる」時代だったから、TSMCは裏方の会社って感じでした。
でも、どんどんチップが複雑になって、「設計は得意だけど、製造は他に任せたい」って会社が増えてきたのです。
2000年代から急成長!
スマホやノートPCがどんどん普及して、小さくて高性能なチップが必要になりました。
そこに対応できたのがTSMC!
Apple、Qualcomm、NVIDIA、AMDなどの会社が次々とTSMCに製造をお願いするようになって、TSMCは“世界の工場”になったのです!
2020年代:もうTSMCなしでは世界が動かない
AppleのiPhoneやMacチップは、TSMCが独占製造し、世界の先端チップの90%以上をTSMCが作っています。
アメリカも日本も「TSMCに来てほしい!」と誘致するくらい、国のレベルで重要な存在。
もう、世界のテクノロジーはTSMCに支えられてると言っても過言じゃない。そのくらいの存在になっています。
「作る専門に集中する」ことで30年以上かけて信頼と技術を積み重ねて、世界一のチップメーカーになった!
TSMCの何が「すごい」の?
世界トップの技術力!
TSMCは、世界で一番小さくて速いチップを大量に作れる技術を持っています。チップが小さいほど、省エネで性能も高くなるんです。
iPhoneの頭脳もTSMC製!
AppleやAMD、NVIDIA、Qualcommなど、有名な会社が作った設計をもとに、実際のチップを作るのがTSMC。特にAppleのiPhoneやMacに使われるチップは、ほとんどTSMCが作っています!
TSMCと他の企業とちがうところ
チップのメーカーとして、インテルやサムスンが有名です。この会社たちは「自分で設計して自分で作る」けど、TSMCは「作ること専門」。この“作ることに特化する”ことで、どんどん技術を磨いて世界中の会社から信頼されています。
TSMCは世界の中心にいる!
今や、TSMCなしではスマホもパソコンもゲームも作れないくらい重要な存在。まさに世界のデジタル社会を支える縁の下の力持ちです。
もしTSMCが止まったら…
→ iPhoneが作れなくなる
→ 車も止まる(車には沢山の半導体が入っています)
→ 世界の経済にも大きな影響が出る
それくらい、超重要な会社なんです。
TSMCへの疑問 その1

設計を自分でしないのに、どうしてうまく製造できるの?
TSMCは、プロの技をもっています。
TSMCはどうやって製造してるの?
TSMCは、AppleとかAMDみたいな「設計が得意な会社」から、「このとおりに作って!」って超細かい設計図(回路データ)をもらいます。
その設計図は、ナノメートル(1ミリの100万分の1)単位の超細かさだから、普通の工場じゃ作れません。
TSMCは、その設計図通りに、めちゃくちゃ正確に・キレイに・効率よくチップを作れる工場と技術を持ってるのです!
たとえるなら…
設計をする会社(Appleとか):建築家
TSMC:超一流の大工さん集団
建築家がすごい家をデザインしても、それをうまく建てられなかったら意味ないですよね。でもTSMCは、「世界で一番難しい建築」を「世界一キレイに素早く建てられる」レベルの職人ってことなんです!
製造専門だからこそ、強い!
TSMCは「どうすればもっと正確に・早く・大量に作れるか」をずーっと研究してる。
だから、設計はしなくても、製造のプロ中のプロになれたんです。
TSMCへの疑問 その2

「チップを小さく・早くする技術」自体に限界があるんじゃないの?
そうなったら、TSMCはやばいんじゃないの?
TSMCは、限界があるってわかっている。だから「やばくならないように、もう次の手を打ってる!」
そもそも、なぜ限界があるの?
チップはどんどん「微細化」されて、いまや2ナノメートルとかの世界。
でも、原子のサイズにも近づいてきてて、もうこれ以上小さくするのは、とても難しい…。
だから、「物理的に限界」って声もあるし、実際にスピードはゆるやかになってきています。
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じゃあ、TSMCはどうしてるの?
新しい作り方(アーキテクチャ)を取り入れる
たとえば、「GAA(Gate-All-Around)」っていう、もっと効率よく動かせるトランジスタ構造に切り替えたりしています。
微細化が止まっても、性能アップはまだできる!
チップを“重ねる”新技術(3D IC)
小さくできなくても、「積み重ねて高性能化」する方法が進化しています。
スマホやAI用チップでは、2.5D・3Dパッケージ技術が超注目されてます。
AI・自動運転・IoTなど、チップの需要が爆増中!
チップが使われる分野が広がってるから、多少微細化が止まっても「作る量」は減りません。
海外に工場を作って、供給を安定化
アメリカ、日本、ドイツなどに進出して、グローバルに成長中。
限界があっても、TSMCはちゃんと未来を見てる!
「小さくできない=終わり」じゃなくて、
「他の方向で性能や価値を上げる」っていうシフトを始めてるから、TSMCはこの先も重要な会社であり続けるはず!
これから半導体関連業界に進みたい皆さんは「他の方向で性能や価値を上げる」ことに、いろんな角度から挑戦することになると思います。
様々な分野にチップが使われるようになり、需要も可能性もどんどん広がっていくのでワクワクしますね。
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