なぜ今、東北大学が半導体分野で注目されるのか?
かつて世界を席巻した日本の半導体産業。その復権に向けた国家戦略の中核として、今、東北大学が熱い視線を浴びています。
国際卓越研究大学の第1号として認定を受けるなど、単なる一大学にとどまらない、まさに日本の未来を背負う存在として期待されているのです。
しかし、なぜ数ある大学の中で東北大学なのでしょうか?
その答えは、世界最先端の研究開発力、未来を担う人材を育てる独自の教育プログラム、そして企業や地域を巻き込んだ強力な「エコシステム」にあります。
この記事では、東北大学が持つ半導体分野での圧倒的な強さを、
世界をリードする3つの研究の柱
未来を創る人材育成プログラム
他大学にはない産学連携エコシステム
という3つの切り口から、その秘密に迫ります。半導体の未来、そして日本の未来を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
他の追随を許さない!東北大学の半導体「研究」3つの柱
東北大学の強さの根源は、世界に誇る研究開発力にあります。
ここでは、その象徴ともいえる3つの研究の柱をご紹介します。
世界を牽引する「スピントロニクス」研究
私たちが使っているスマートフォンやパソコンのメモリは、データを記録するために多くの電力を消費しています。
この電力消費を劇的に削減できる次世代技術が「スピントロニクス」です。
東北大学はこの分野の世界的権威であり、省電力AIプロセッサや次世代メモリ(MRAM)の開発をリードしています。
その技術は、150℃の高温にも耐えうるほどの安定性を誇り、過酷な環境が想定される車載半導体への応用も期待されています。
まさに、IoTやAI社会の実現に不可欠なゲームチェンジング・テクノロジーと言えるでしょう。
この分野の著名な研究者を、東北大学から数多く輩出していますが、ノーベル賞受賞を期待されている、前総長の大野英男さんなどがいます。
また、大野研究室を引き継いで、さらに進化・発展される研究を深見俊輔教授・金井駿准教授の研究室が行っています。
産学連携の心臓部「国際集積エレクトロニクス研究開発センター(cies)」
どんなに優れた研究も、実用化されなければ社会を変えることはできません。
その「研究」と「実用化」の橋渡しを担うのが、国際集積エレクトロニクス研究開発センター(Cies)です。

Ciesの最大の特徴は、多くの企業が実際に使用している300mmウエハ対応の試作ラインを学内に持っていること。
これにより、大学で生まれた最新技術を、すぐに企業の製品開発に活かすためのテストが可能です。
まさに産学連携の心臓部として、日々新たなイノベーションを生み出す共創の場となっています。
未来を照らす光「次世代放射光施設 NanoTerasu(ナノテラス)」の活用
2024年に本格稼働を開始した「NanoTerasu(ナノテラス)」は、「巨大な顕微鏡」ともいえる最先端の研究施設です。
太陽の10億倍もの明るさを持つ「放射光」という特殊な光を使い、これまで見ることができなかったナノレベル(10億分の1メートル)で物質の構造や機能を分析できます。
半導体開発において、材料の微細な構造を正確に知ることは性能向上に直結します。
NanoTerasuは、より高性能で、より省電力な次世代半導体を生み出すための「切り札」として、国内外の企業や研究者から大きな期待が寄せられています。
世界で活躍する人材を育てる!東北大学の「人材育成」プログラム
東北大学の強みは、研究開発力だけではありません。
未来の半導体産業を担うトップクラスの人材を育成する独自の教育プログラムも充実しています。
学部教育から大学院での専門研究まで、一貫して半導体を学べる環境が整っているのはもちろん、企業の研究者を講師として招き、より実践的な知識を学ぶ機会も豊富に用意されています。
さらに、東北大学は「東北半導体・エレクトロニクスデザインコンソーシアム(T-Seeds)」に協力しています。

学生が実際にクリーンルームで半導体製造プロセスを体験できる実習や、半導体関連企業への視察ツアーなどを開催しています。
学生が早い段階から産業界との接点を持ち、自らのキャリアを考える貴重な機会となっています。
【他大学にはない強み】東北大学が構築する「半導体エコシステム」
東北大学の真の強さは、大学内にとどまらず、企業や地域社会を巻き込んだ「エコシステム」を構築している点にあります。
ここでは、その具体的な企業との共同研究事例をご紹介します。
JX金属株式会社との連携
JX金属は、東北大学と2018年に連携協力協定を結び、現在まで強い繋がりを持っています。
同社は、大学の研究成果を製品化して市場に出すことを支援する活動や、大学内に研究棟(マテリアルイノベーションセンター)を寄贈するなど、東北大学の新たな研究技術開発に寄与しています。
例えば、JX金属は、東北大学の小池淳一教授の技術を活用して銅ペーストを開発に取り組む株式会社マテリアル・コンセプトに出資しています。

マテリアルコンセプト社の銅ペースト技術は、太陽電池内の配線材料に使われ、従来の銀ペーストの半額で生産可能で、太陽電池の生産コストダウンに寄与することが期待されています。
まとめ:未来の半導体は東北大学から生まれる
この記事では、東北大学が半導体分野で世界をリードする理由を、以下の3つの視点から解説しました。
スピントロニクス、Cies、NanoTerasuを核とした世界トップレベルの研究開発力
産業界のニーズに応える実践的な人材育成プログラム
多様な企業と連携しイノベーションを加速させる強力な産学連携エコシステム
東北大学は、もはや単なる教育・研究機関ではありません。
日本の半導体産業の未来を創る「中核拠点」として、その挑戦はまだ始まったばかりです。
半導体分野でのキャリアを目指す学生の皆さん、新たな技術シーズを求める企業の皆さん、ぜひ一度、東北大学の取り組みに注目してみてはいかがでしょうか。
未来のテクノロジーは、ここ宮城の地から生まれるのかもしれません。

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